カニおブログ

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通訳者が不健康な心の汗をかくまで

相手に言いづらいことを一番はじめに相手に伝えるのは通訳である。聞きたくないことを一番最初に聞くのも通訳である。通訳ってのは精神的なタフさが求められる仕事だと思う。

時に人間は、自分が直接相手に言わなくてもいいとなると、とたんに横柄に、そして図々しくなるものだ。そして間に立つ人は何時だってストレスにさらされている。

しかも通訳には相手の言いたいことを正確に訳すという使命がある。それが通訳が本当につらいところなのだ。以下簡単な例を挙げる。

 

中国人:「今回の業績悪化はお前ら日本人のせいアル!」

カニ夫:「日本人のせいだって言ってます」

日本人:「なにいってんだ!お前ら中国人の管理が悪いせいだろ!」

カニ夫:「中国人チームの管理手法に問題が…」

中国人:「お前なに言ってるアルか!お前らの連絡が遅かったのが悪いアルよ!」

カニ夫:「そもそも日本人の連絡の遅さに問題があったと…」

日本人:「だぁーかぁーらぁー!何回も言ってるけど、お前らの管理は(ガミガミ)」

 

こんな通訳をしてると、だんだん下線部の「お前ら!」という言葉が、自分自身に向けられているような錯覚に陥ってしまう。加えて(特に日本人に多いような気がするのだが)エキサイトしてくると、なぜか相手ではなく、通訳の目を見て話してくる自分が怒られているような感覚になってきて、だんだんグロッキーになってくる。そんな「自分への罵倒」として脳内変換された言葉を、一言一句聞き漏らすまいと集中し、意味を噛みしめて、瞬時に自分の言葉として多言語に変換しなければならない。はがゆい!

しかも人間ってのは不思議なもので、自分が不快だと思う言葉は耳から入ってこなくなる。ちょうど面倒くさいお説教が左耳から入って右耳から抜けるように。え、いま何て言ってたの?全員が自分の翻訳を待ってじっと僕の顔を見ている…頭真っ白、カニみそダダ漏れである。そして脳内の糖分がゼロになった瞬間、悲しくもないのに涙が出てくるのである。まさに心の汗。不健康なほうのね

僕は専門の通訳ではないので、限界に達したときは「ちょっと休憩させてください!」と言えるけれど、通訳を専門としている人々は、本当に大変だと思う。「通訳っていわゆる事務職みたいなもんだろ?」くらいの認識の人は、ぜひその考えを改めてほしい。そして海外駐在員で専門通訳がついている方はぜひともその大変さを分かってあげてほしいし、彼らがなるべく翻訳しやすいように一言一句に気を配ってあげてほしい。